半年余り前、能を始めました。

きっかけは、親父の死でした。私の町は素人が能を演じる珍しい文化があり、親父はそのグループの会長をしていました。親父が死んでその仲間の方から誘われて入ることになりました。

 

私は20代の半分を東京で過ごし、田舎に帰ってからは地域の集まりに積極的に参加できずにいましたが、40代過ぎてからは少しずつ地域の役に立ちたい気持ちが芽生えてきて、かと言って何をすればいいか正直わかりませんでしたが、何でもいいので集まりに参加しようと思っていました。

 

そうして足を踏み入れた能の世界は、難しい。ストーリーがわかりにくい。伝わりにくい… いわば、「幽玄」でしょうか。400年以上の歴史がある純日本文化ですが、何が面白いのかわからないというのが正直なところでした。

 

昔、剣道をやっていました。剣道も能に似ていて、純日本文化であり歴史があるがやったことのない人には何が面白いのかわかってもらえない。やっている者同士の仲間の間では苦労が分かち合える。能も、やり始めるとやっている方は意味が徐々にわかってきて全然面白くないことはないです。でも、欲が出てきて見ているひとにもっと共感してもらいたくなってくるのです。

 

このご時世に、演出が声の出し方とか、舞う手の動かし方や足の運び方、笛や太鼓、地謡、独特の能面の表情、といったもので表現されます。歌舞伎とかは時代とともに新しい技術を取り入れているように見えますが、能は比較的昔の演出方法を貫いているように思えます。

 

まだ始めて間もないので、わかったようなことを言うのは控えたいと思いますが、やるからには多くの方に能の魅力を共感してもらえるよう、目的意識をもってやっていきたいと思います。

 

http://www.bea.hi-ho.ne.jp/eizo-eye/takiginoh_001.htm